理想の家

その家を初めて見たとき女は、「いいなあ」と思った。

敷地の境に柵はなく芝生が広がっていた。樹木は1本もない。

北側に平屋の家があり、手前に2台分のコンクリート敷きの駐車場。

土地の形状は緩やかな南傾斜。

そこには穏やかな時間が流れているのだろう。

もし、この家に住むことができたなら女は、

家近くの芝生半分を花畑に、残り半分を野菜畑にして、

しっかりと生け垣を作ってしまうだろう。

自由が欲しいようで、違うようだ。